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小津組カメラマン・厚田雄春の視を継ぐもの

 久々に、アツい現場に遭遇してしまいました。ムービーではありません、スチールの撮影です。それもスタジオの七五三の撮影です。でも、アツい。部屋に満ちる緊張感、集中力、気迫、スピード・・。まさに大人たちの真剣勝負の場。そして、被写体の子どもは楽しそうに笑顔をみせ、確実にその瞬間がネガに焼き付けられる。

Kanno01 ここは、大船駅東口の代ゼミの並び(かつての松竹前)にある>>菅野写真館。笑顔の子どもや家族写真には特に定評があり、鎌倉のみならず関東各地から予約が入るといいます。受付の隣のガラスケースに目をやると、なぜか東大学長>>蓮實重彦氏からの感謝状が。そしてその下のモノクロ写真には低位置にセットされたフィルム用カメラと、見覚えある笑顔・・・。そう、あの小津組の撮影監督、>>厚田雄春(あつた・ゆうはる)その人がいます。

 日本を代表する映像作家、>>小津安二郎監督と長らくコンビを組んだ厚田キャメラマン。「秋刀魚の味」(62)「お早よう」(59)「彼岸花」(58)「早春」(56)「東京物語」(53)をはじめ、戦後のほぼすべての小津作品の撮影を手がけました。額の中の写真は、小津を敬愛する>>ヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー作品>>「東京画」(85/独)でインタビューに応じた時のもの。 そして、厚田さんの三女である菅野公子さんと、お孫さんである菅野松太郎さん、太一郎さんご兄弟が経営されているのが、何を隠そう、この菅野写真館なのです。

 で、先ほどの緊張感みなぎるスタジオ撮影。小津作品ファン、厚田視線の一ファンとしては、「道理で」と思ってしまいます。世界中の人をうならせたカメラマンの血脈が、ここにあるのです。ムービーとスチールと、カメラの種類こそ違っても、人を写す、ある瞬間を切り取って行くという行為は同じ。あるいは、現場に対して真摯に挑む姿勢は、菅野ファミリーが厚田氏の仕事ぶりを身近に見聞した中で自然と学ばれたのではないかしら・・・等々。
Kanno02
 写真の勉強を始めたばかりの松太郎さんに、「作品の中に自分を写し出すように」とアドバイスされたという厚田さん。氏が87歳で亡くなった時、松太郎さんたちご兄弟は20歳。「今だったらもっといろんなことを聞いて、いろんな話ができたのにと思いますよ」と松太郎さんはおっしゃいますが、いえいえ、大切なものを十二分に受け継いでいらっしゃるんではないでしょうか。

Kanno 菅野写真館は、前出の蓮實氏の音頭で東大総合研究博物館が98年に開催した>>“デジタル小津安二郎展〜キャメラマン厚田雄春の視(め)〜”に、小津作品の詳細をたどれる撮影資料や、あのカニ足三脚など、貴重な遺品を多数提供されたとのこと。公子さんによれば、それらは現在、市内某所で眠っているらしい。小津作品の記念コーナーが鎌倉市の施設に常設される日を夢見て。・・なんともまあ、先人たちに申し訳のない話。

※小津監督と厚田キャメラマンの関係について、蓮實氏が読売新聞に寄せた一文は>>こちらでお読みになれます。厚田さんあっての小津作品だったんですよね。

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大船芸術館通りにある赤れんが色のビル。お母さん+二人の息子さんという菅野ファミリーで経営されている写真館です。 その撮影現場にお邪魔しましたが、被写体の自然な笑顔をネガに焼き付けるため、お三方がみせる集中... [続きを読む]

受信: 2006/09/18 11:24

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